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過去のワークショップ詳細WEB討論会シリーズ(全4回)

 

WEB討論会シリーズ第2回 パネルディスカッション

 
PBL教育とエンジニアリングデザイン教育の現状
~高専の事例から~

開催日 2013年11月22日 14:00~16:30
会場 国分寺Lホール

 今回は、PBL教育とエンジニアリングデザイン教育の現状~高専の現場から~と題して、高専の取組み事例を取り上げました。

 近年技術レベルが高度化し、学ぶべき事が増える傾向にある中で、多くの高専がコアカリキュラムやエンジアリングデザインの視点を盛り込んだPBL教育の導入など改革に取り組んでいるところです。ここでは創造性育成や課題解決型教育につながるPBL教育について特色ある取り組みをしている高専の中から次の4高専に取り組み事例とご経験を踏まえてのお考えをお聞きしました。仙台高専からは知能エレクトロニクス工学科准教授・與那嶺尚弘氏、富山高専からは技術室技術専門員・伊藤通子氏、松江高専からは機械工学科教授・別府俊幸氏、熊本高専からは建築社会デザイン工学科教授・下田貞幸氏にご登壇頂きました。

 また一関高専には課題解決型教育や完結型教育(アクティブラーニング効果を高める手法として、具体的な製品の性能、機能などと専門の関係を結びつけ、基礎から応用への理解を高める科目間連携を図った教育)などをCOOP教育の仕組みを活用して推進している概要についてフロア参加としてご紹介いただきました。基調講演としては、カリキュラム改革を組織的に進めておられる沼津高専校長・柳下福蔵氏にお願いし、「PBL教育を、エンジニアリングデザイン教育に進展する時の課題」と題してご講演頂きました。

 基調講演では、低学年から高学年へのPBL関連科目の配置と内容、ならびに現在行われているPBL教育の限界について言及され、最後にPBL教育をエンジニアリングデザイン教育に進展する時の課題と解決策についてご紹介いただきました。たとえば2年生で行っているミニ研究は一般教科の教員も含め全員体制で行っており、課題提示型で学生が自ら考え調査を進め、グループ活動を通して解決へと絞り込んで行くもので、アクティブラーニングの効果も発揮されていることなどについて紹介されました。その上で、イノベーションの創出ができる実践的で創造的な技術者の育成にはまだまだ不十分であることから、準備段階にある、自ら学び取る仕組みを総合的な視点で構築する教育の構想についても紹介されました。この教育を成果へと導いて行くためには何にもまして担当教員の意識改革が重要になると強調されました。

 事例紹介ではパネリストが所属する高専での取組み事例についてご紹介いただきました。各高専の取り組み事例についてはWeb画像をご覧下さい。

 続くパネル討論は、次の7つの話題について討論いただきました。

 ①PBL教育の導入に至った背景
 ②エンジニアリングデザイン教育導入までの準備状況
 ③地域社会との連携の在り方
 ④PBL教育における技術職員の役割
 ⑤PBL教育先進国に学ぶ
 ⑥課題発見の実施例としてのCOOP教育の事例から
 ⑦教育改革とPBL教育の関わり

 各パネリストのご経験をふまえ率直で熱のこもった討議がなされました。

 共通の認識として、PBL教育には社会と連携して進めるCOOP教育が効果的であり、そのためには基盤となる産業界や社会との連携環境の構築が重要であることが上げられました。それには機会あるごとに地域に出向き信頼関係を築くなど連携体制の構築に向けての日頃の努力が欠かせないことや、専門教育との関係の重要性、そして何より教員間の認識の差異を埋めていくことの大事さなどが共通点として話し合われました。

 また、パネリスト各氏はそれぞれCalifornia大学やAalborg大学に出向き調査研究し、わが国教育システムとの違いを認識したことなどについて触れ、調査大学ではいずれも教員の事前研修がしっかり行われ、カリキュラムも全体がPBLを意識した設計になっていること、あるいはまた米国などのように産業の疲弊時期に徹底して原因などを検証し、組織的に教育手法を開発し導入していったことを上げた上で、わが国にも同じ状況があるにも関わらず本質的議論が不足しているまま導入しようとしていることへの危惧も指摘されました。

 PBL教育の導入にあたっては地域の事情などを十分に検証したり、高専の教育の実態も考慮するなどして、しっかりした設計の下で進めて行くことが重要であるとの共通認識が示されました。 また伊藤氏は実践的技術者教育を進める高専の特色として、PBL教育における技術室職員の役割が大事であると事例を上げて説明されました。PBL教育を効果的に推進するにあたり大変重要な視点であり、加えて技術室の強化、ならびに教育のみならず地域に開かれた実習工場の機能強化などは高専のCOOP教育充実にとって極めて重要な課題と思います。

“イノベーティブ・ジャパン”プロジェクト推進室 特命教授
丹野 浩一