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過去のワークショップ詳細WEB討論会シリーズ(全4回)

 

WEB討論会シリーズ第1回 パネルディスカッション

 
これからの技術者教育に必要な新たな視点
~エンジニアリング・デザインを意識したPBL教育のすすめ~

 第1回目は、エンジニアリングデザイン教育、およびPBL教育に関する基本的な考え方について、「これからの技術者教育に必要な新たな視点」~エンジニアリングを意識したPBL教育のすすめ~と題して、長年同教育の必要性を主張され啓発に努めて来られた元国立高専機構理事四ツ柳隆夫氏と、現在当イノベーティブジャパンプロジェクトにおいて「社会実装教育」を推進する東京大学フューチャーセンター推進機構RTイノベーションコンソーシアム特任教授で東京高専特命教授の佐藤知正氏による対談を企画しました。

 対談はおもに次の7つのテーマで進められており、これからの技術者教育の在り方を検討する上で大変重要なキーワードがたくさん盛り込まれた内容の濃い対談となっています。

 ① PBL教育の目指すところ ~導入の背景~
 ② 高専のPBL教育
 ③ 課題と現場の工夫
 ④ 効果と評価
 ⑤ 教育現場への期待
 ⑥ 社会変革に貢献するエンジニア
 ⑦ 若いエンジニアへの期待

 四ツ柳氏は、これからの高専教育は、設立当初の実践的な中堅技術者育成という使命から脱皮し、創造的かつ実践的な能力を身につけ、将来産業社会の変革をリードしていけるような技術者を育成することを使命とすることが重要であると強調しています。高専教育に携わってこられたご経験とNASA研究員からの指摘を引用され、創造性教育は、少しでも若年齢段階から始めることが重要であり、この点、早期技術者教育を旨とする高専はそのトレーニングの場として最も適している。その上でこの教育を実現するためには知識詰めこみを主体とした従来のティーチング型教育から、PBL教育の手法を活用し自ら学び考えるアクティブラーニング型教育への転換が必要であると述べています。

 PBLには、(1)課題発見のための企画に始まり、関連情報を求めていく「探索PBL」と、(2)集めた情報などを整理し、総合的に使えるようにするための「学習の過程のPBL」とがあると説明しています。
 PBL教育の初めのキーは「着想」にあり、この着想は身につけた基礎や実験などからの体験から引き出され、自分で気づき組み合わせていくものであるとし、教員には「気づき」や「自ら学ぶ意欲」を支援する工夫が必要になると述べており、これは講義の中でも工夫すれば導入は可能であるとしています。その効果を高めるためには、教員にも答えのない課題に共に取り組む姿勢が必要であり、教員自身が創造体験を持っていることが望ましいと述べています。

 佐藤氏は、PBL教育を実践する場として東京高専が核となって進めている「社会実装教育とそのコンテスト」の考え方、意義について紹介されました。 はじめに何を社会にサービスするのか、どのようなビジネスモデルがあるのか、そして関係する技術を活用するイメージなど全体のグランドデザインを考えることが重要であり、常に社会のシステム全体の統合を考えながら進めることが大事であると述べています。その上で具体的な進め方として、課題の探索に始まり、ユーザの声を反映させながらモノを造り、それを社会に持ち込み、適宜繰り返しユーザの声を聞き、改良を重ね理想とするモノへと近づける流れを説明されました。最終的にこの取り組みの過程をオープンな場で発表してもらいコンテスト形式で評価を受けるという流れとモノづくり教育の考え方について紹介しています。

 社会実装教育を進めるメリットとして、学生が直接地域や企業に出向きテーマを探索し、それを解決して行く過程で、チームワークで取り組む喜びを感じたり、社会と向き合う場で厳しい指摘を受けたり激励されたりする経験を経て、謙虚に話し合うことの大事さ、あるいは専門学習では出来ないことを体験して社会に役立つモノづくり全体を学ぶことが出来ることを上げています。また、具体的に作成するにあたって、ユーザの声をエンジニアリングの言葉に翻訳し、開発に結びつけるという技術的な翻訳能力も養成され、エンジニアリングリテラシ-の面からも有効であること、そして最後までやり遂げ達成感を味わうことによって学生自身が感動し、自ら学習したいという心に火が付くなど高い学習効果が期待できると述べています。

 両氏の共通認識として、この教育を進める際に重要なこととして、依って立つ専門分野の“discipline”
は絶対的に必要であることや、関わる分野それぞれに「研究」の姿勢を持つことが基本的に重要であることを上げています。なお、高専における研究の位置付けについては高専機構法第3条、第12条に規定されています。

“イノベーティブ・ジャパン”プロジェクト推進室 特命教授
丹野 浩一