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特命教授コラム

 
ロボット革命のすすめ~科学技術社会実装活動~(全3回シリーズ1/3)
東京工業高等専門学校 特命教授 佐藤 知正
2015.04.15


▋ロボット革命のすすめ1:革命の担い手はあなたがた学生
 ~ロボット革命を呼びかける対象~


 政府はことし1月、総理大臣官邸で「ロボット革命実現会議」の最終回を開き、ロボットの社会導入を加速させる新たな戦略(ロボット新戦略)を決定した。これを受けて安倍総理大臣は、「今年は、いわゆるロボット革命元年となる。」と述べた。
 本稿は、社会をよくしようと思っている学生諸君に“ロボット革命”をすすめる檄文である。特に、イノベ―ティブジャパンプロジェクトのもと、科学技術の社会実装活動に参加している諸君に対して、 “ロボット革命(社会を科学技術によって変える)の担い手”になってもらいたいというメッセージを、3回に分けて書く。
 以下、本稿では、ロボット革命に関して、今回の第一回目では、“ロボット革命の理由と担い手”を、第二回目では、“ロボット革命の思想”を、そして第三回目では、“ロボット革命の武器と実践”について述べる。具体的は、まず、1)革命の背景と担い手があなた方学生であることを示す。次に、2)ロボット革命思想に相当するものとして“ロボット社会のあるべき姿”を紹介する。最後に、3)ロボット革命の武器として、どのような学問と体験が役に立つのかと、これらの武器(道具、手段)を活用しながら革命活動を実践する際に、イノベ―ティブジャパンプロジェクトで実施している“社会実装活動”が役立つことを述べる。これらを踏まえて、学生諸君が、ロボット革命に踏み出し、それを成し遂げてくれる期待を述べて本文を結ぶ。


▋0-1ロボット革命が必要な理由

 日本は、災害大国、高齢社会の課題先進国である。これらの課題を世界に先駆けて解決することができれば、そのやりかた(解決法、ソリューション)は世界が欲しがるものなので、確立した技術で日本は世界に貢献し、技術立国を確実にすることができる。この観点から、災害対応や社会インフラ対応ロボットや、医療福祉ロボット、さらに高齢者とでもともに働ける新しい産業用ロボットが期待されているが、従来の延長線上のやり方では、これらのロボットが普及し社会に定着することは困難であると考えている(詳細は第二回目に書く)。まさに、従来とは一線を画する非連続的なやりかた、つまり“ロボット革命”が求められているのである。
 本文章は、このように科学技術をによって、社会を非連続的によくしようと考えている学生を対象とした文章である。


解決手段としてロボット、ロボティクスは有力
   これが、ロボット革命である


 災害対応ロボットや医療福祉ロボット、新産業ロボットは、災害大国、高齢社会の課題を解決する有力な手段である。このように説明すると、イノベ―ティブジャパンプロジェクトに参画している学生諸君の中には、自分の研究課題やテーマは、ロボットでないので、この文章は自分とは関係ない話題であると考える人が現れるかもしれない。以下、そうでないことを、これからのロボットは従来のロボットとは非連続的に異なるものになるという観点から説明する。


ロボット、ロボティクスの定義
人や生物の機能を備えた機械=計測、判断、行動の機能を備えた機械


 ロボットの定義は、人によってさまざまであるが、筆者は、『ロボットとは、人や生物の機能を一部または全てを備えた機械である』と定義している。言い変えると『周囲を“計測”し、どのような状況になっているのかを“判断“し、それによって”行動“する機能の一部あるいは全てをもった機械がロボット』ということになる。これによれば、ヒューマノイド(人型ロボット)はもちろんロボットであるが、例えば、TVカメラがついた自動販売機も、あるいは単なる自動販売機もロボットということになる。自動販売機では、投入されたコインの重さを”計測“し、それが正しいコインであるかどうかを”判断“し、正しい金額が投入されたら対応する製品を差し出す“行動”をするからである。


機械を動かすロボティクスから社会を動かすロボティクスへ


 日本ロボット学会は、このようなロボットをこれまで30年間追及してきた学会である。会社でも、30年(一世代)をこえて存続するためには、そのやり方や扱う品目を一新(革新)しなければならないといわれている。筆者は、『これまでの日本ロボット学会では、“機械を動かすロボティクス(ロボット学)”を追求してきたが、これからの日本ロボット学会は、“社会を動かすロボティクス”を追求すべきである』と考えている。つまり、これからのロボットは、“動く機械”ではなく、“社会を動かす機械”であるべきだと考えている。“社会を動かす機械”を追求するとは、例えばロボットである機械が動くことにより、工場の効率が上がるばかりでなく、これまで可能でなかった高機能な製品を高齢者でも生産できるようにすることまでを考慮にいれた機械を追求すべきであるること、いいかえれば、機械の動きを産業社会や高齢社会のような社会に与える影響までを考慮して実現すべきであるという意味である。そのためには、“動く機械であるロボット”を実現するために必要な機械工学、情報工学、電気・電子工学ばかりでなく、“社会を動かすロボット”を実現するために必要となる経済学、人文学、教育学、社会学などの知識を習得しておかねばならないし、そのような多くの知識を新しく創造しながらロボットつくりをせねばならないことを意味している。しかし、ひとりですべてをマスターする必要はない。これらが必要であることを理解して、あなたがたでチームを作ればよいのである。


“ロボット革命のすすめ”を呼び掛ける学生の範囲とは?


 このような観点から、この“ロボット革命のすすめ”を呼び掛ける対象は、新しいロボットである、社会を動かす機械を追求する人であり、科学技術を学びそえれを新しく作りながら社会を変えようとしている学生を対象としている。いいかえると、工学を学ぶ(あるいは学ぼうとしている)学生ばかりでなく、経済学、人文学、教育学、社会学などを学ぶ(あるいは学ぼうとしている)学生もが対象である。つまり、ロボット革命の担い手は、あなたがた学生なのである。
 このように、本稿では、ロボットを広義にとらえており、この観点からいえば、以下の文章においては、『ロボット』を『科学技術』と読み替えて読んでいただければ、より多くの学生諸君がロボット革命の担い手であり、その内容をより深く理解してもらえると考えている。


留意点:役に立つロボット=人にできない機能をもつこと


 ここで、一点留意していただきたいことがある。それは、“役に立つロボット”は、“人にできない機能を持つロボット”であると筆者は考えていることである。例えば「同じ作業を何万回でも繰り返せる」「菌や老廃物を出さない」「高い放射能や超低温の中でも活動できる」などである。いいかえると、“役に立つ科学技術”は、“人にできない機能を実現する科学技術”であると考えている。



ロボット革命のすすめ~科学技術社会実装活動~(第2回)へ続く
 
これまでの佐藤知正特命教授の記事

・ ロボット革命のすすめ~科学技術社会実装活動~3/3 (全3回シリーズ)
・ ロボット革命のすすめ~科学技術社会実装活動~2/3 (全3回シリーズ)
・ ロボット革命のすすめ~科学技術社会実装活動~1/3 (全3回シリーズ)
・ 部屋がロボット(1)




佐藤 知正
SATO TOMOMASA

東京工業高等専門学校
特命教授
前東京大学大学院情報理工学系研究科教授
東京大学フューチャーセンター推進機構 RTイノベーションコンソーシアム特任教授