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特命教授コラム

 
部屋がロボット?(1)
東京工業高等専門学校 特命教授 佐藤 知正

▋部屋がロボット(誰も考えないことを考える)

 “社会を変えること”、つまり“社会変革”を“イノベーション”といいます。これまで、自動車、飛行機、スマホなど、科学技術によって作り出されたモノが私たちのくらし、社会を変えてきました。このような科学技術の成果による社会変革を、“科学技術イノベーション”といいます。科学技術イノベーションを引き起こすためには、新しいことを考え出し、それを現実のものにしなければなりません。というのは、これまでにないモノを実現し、世の中に普及させ、我々の暮らしを変えるためには、これまでの先人が重ねてきた失敗を乗り越えなければならず、そのためには、少なくとも、先人が考えなかった新しいことを考えて、それを現実のものとしなければならないからです。

 ロボットを研究してきた私は、20年前に、新しいロボットとして、“部屋をロボットにしよう”と考えました。部屋をロボットにするとは、具体的にいえば、天井に目がついており、壁から腕が出ているロボットを実現するということです。つまり、部屋の床や壁や天井が、ロボットの目や手であり、その部屋としての目や手が、ロボットである部屋の中にいる人のために働いてくれるロボットをつくろうと考えたのです。“部屋のロボット化”と言い換えることもできます。図1にその時に想像した新しいロボットの姿(環境型ロボット、部屋のロボット化のイメージ)を示します。それ以前のロボットは、人間のような形をした機械でした。それに比べて“部屋がロボット(ロボティックルームと名付けました)、あるいは“ロボットの部屋”、ないしは“部屋のロボット化”は、人間の周囲がロボットとなるわけですから、その当時、斬新な(奇妙?)なアイデアでした。

▋病室をロボットにしよう(ロボティック病室をつくろう)

 アイデアが新しければよいという訳ではありません。それが人の役に立つことも重要です。そこで、ロボティックルームの応用例として、“病室”を取り上げることにしました。健康な人でも、病気になって動けなくなると、ロボットにものをもってきてもらいたくなりますね。そのような時に、壁のロボットの腕が、患者が指差したものをもってきてくれるロボットを実現しようとしたのです。つまり、ロボティックルームの目標の第一歩を、ロボティック病室に設定したのです。実現できたロボティック病室の写真を図2に示します。

 大学の研究室では、ロボティックルームは、ロボティック病室として実現されたのですが、残念ながら現時点では、病院に普及しているとはいえません。アイデアと実用の間には、乗り越えなければならないギャップがあるのです。時間がかかるものなのです。しかしながら、世の中には。すでに役に立っているロボティックルームの応用例、あるいは、ロボット化された実用的なモノが存在します。次回にそれを紹介しますので、それまでに、自分が作るならどのような目的のロボティックルームを作るかや、ロボット化すればよいと思うものをいくつか考えておいてください。これは!と思うものが思いついた人は、佐藤知正までメールください。議論しましょう。ただし、特許をとろうと思う人は、そのアイデアは、私にはメールせずに、大切にとっておいて、いつか特許にしてくださいね。